真・流行り神という実験しない実験作

すっごい期待してたんです

真・流行り神というゲームが出ました。まぁ、ホラーです。
サウンドノベルゲームで、手軽に楽しめるボリュームで、オチが恋愛に走らない、というゲームは結構貴重なので、かなり楽しみにしていました。
前シリーズの流行り神1〜3はなんだかんだ「もう少しで友人に勧めるのになぁ」って感じで、妙に惜しい佳作として見ていまして。
その新章としてみれば、そりゃあ期待します。
「あの部分はどう改善してきたのかな」みたいな。

で、先日買いまして。
本日クリアしました。ひと通り。

結論から言えば、非常に残念だったなぁ、という感じです。
面白い部分も結構あったんですよ。
じゃなきゃクリアしませんし。
ただ、それ以上に「残念さ」が目立った結果でした。

ということで、真・流行り神のレビューというか感想と言うか、そんなものを書こうと思います。

面白かった部分:恐怖を要素分解して再構成しようとする試み

真・流行り神は、「恐怖を要素分解してみよう」って言う試みを強く感じました。
流行り神は、「都市伝説」という視点から構成している手前、どうしても「人間の不気味さ」に焦点があたってしまうわけです。
ちょっと2は心霊要素が強すぎて怖い話じみていますけれど、チェーンメール流行り神)や客の消えるブティック(流行り神3)なんかは良くある都市伝説を題材にしています。
いずれにせよ、この縛りは面白い要素であると同時に、「怖さの一面化」を招きやすいです。
だからこそ3で一旦切ったのだと思いますし。

ということで、真・流行り神は怖さを分解して再構成したんですね。
人間の不気味さを描いたブラインドマン編はまぁ、これまでどおりの都市伝説を切り口としたものです。
それとは別に、極限状態における人間関係の混乱を描いたパンデミック編や、ガチガチの心霊ものの悪霊編など、「怖さのバラエティ」を強く意識していました。

これはかなり良い試みだと思うので、続編があるならその辺意識してみて欲しいなぁ、とか思ってます。

でも、面白かった点はこれだけです。

ダメだった点その一:システムのちぐはぐさ

とりあえず最大の問題は、システムのちぐはぐさでした。

流行り神1〜3は、物語の最後に「推理ロジック」という形で、各キャラクターの関係を穴埋めする部分があります。
この推理ロジック、今作では驚くほど意味をなしていません

ここでは、過去作では何故意味をなしていたのか、という部分にスポットを当ててみますね。

流行り神1〜3は「オカルトルート」と「科学ルート」という、一つの話に対して大きく二つの展開(オチ)が作られています。
# この二つの分岐点はかなり雑(物語の中盤で、科学編に行くかオカルト編に行くかの選択肢がある)なのでそこは改善して欲しかったポイントだったんですけど。

ポイントは「同じ話で二つのオチがある」と言うことで、それが推理ロジックって言うシステムに活きるんですね。
同じキャラクターなのに、どっちのルートを選ぶかで、その人を表すキーワードが異なるわけですから。
推理ロジックはキャラクターの関係の穴埋めである以上、どうやってもストーリーを総括するための読解問題でしかないので、ストーリーを総括した時に新たな発見がある仕組みじゃないと面白く無いんですよ。
ところが、今回は同じテーマでオカルト編と科学編にわかれるような、二つに分岐するような仕組みが取られていません。
結果的に、ストーリーを総括する「推理ロジック」が、本当に総括するだけの機能しか果たさず、「そんなん知ってるわ」としか言えないものになってしまいました。

他にも、新システム「ライアーズ・アート」(多分self-questionの進化版)とかも、その派手さの割にストーリーに影響を与えず、「あれ?」って思ってしまう感じでした。

ダメだった点その二:キャラクターの再利用による混乱

真・流行り神は、「選択肢によって起きる事件が異なる」という、かまいたちの夜形式のゲームです。
# ちなみに流行り神1〜3は、章立てになっていたので、逆転裁判形式のゲームといえばわかりやすいかもしれません

ところが、この話、メインルート(普通に選択すれば通るルート)である「ブラインドマン編」が他のルートと同じくらい短いんです。
大体一時間もあれば読み終わるレベル。
そこまではまぁ良いです。長ければ良いってもんじゃないので。

問題は、このゲームがかまいたちの夜形式だということです。
選択肢によってルートが切り替わり、そのルートによって起きる事件が根本的に変わります。同時に、キャラクターの相関関係や設定も、合わせて微妙に変わる構成になっています。
ところが一話が一時間程度のゲームに置いて、キャラクターの設定が話ごとに変わるのは、かなりのストレスを感じるんですね。
主軸からして話が短いので、ブラインドマン編の知識を前提として、「お、今度はこんな感じで来たな」って言う、キャラ設定を楽しむことが難しいですし。
かといって、どのルートでもキャラクターの設定が同じになるように話を組み立てているわけでもないので、「こういう面から掘り下げてきたのか」って言うワクワク感もない。
あまりにもキャラクターの掘り下げ方が雑で、設定もとってつけた感じがするために、「あ、このルートではこういう設定なのね」って理解することが求められるだけです。
しかも、理解したころにはそのキャラクターは死んでいるか、事件は解決に向かっているので、また次に向けて「キャラクターの設定に対する理解をリセットする作業」が求められる。
これはもうシステム的に大失敗でしょう。

なんで章立てにしなかったのか、というレベルで頭を抱える感じでした。
いえ、メインルートであるブラインドマン編の主要人物が罪人って時点で、章立てにしたら次の章からそいつ出てこなくなるので仕方ないのかもしれませんが。

総括として、本当に残念でした。

他にも言いたいことは山ほどあるんですよ。
インテリ設定のキャラなのにインテリじゃなくてただの変人にしか見えないとか、いろんな切り口からホラーを描こうとしているのに、最終的には生理的な嫌悪感を感じる猟奇シーンに落ち着いてるじゃん、とか。

それでもまぁ、最後までクリアできるくらいには時間を潰せました。
ただ、全エンディングをコンプリートしようとかそういうのはもう攻略サイト見ながら作業だなぁ、って感じです。

本当に、流行り神の時に革新的だったと思われる「科学/オカルトルートの切り替え」とか「推理ロジック」とか、そういう実験的な試みを全部形骸化させて、「ホラーの再構成」という試みも試みただけでから回っていて。
実験しなくなった実験作、という感じが否めないんですよね。

「どんな感じで流行り神を再構成するのかなー」と期待していただけに、本当に残念で残念で……

ということで日記を閉じます。はい。