貴方の提案は通りません

提案が通らない人について

仕事柄、色々な提案を受けるのですが、「無難なもの」はまぁさて置いて、「ちょっと奇抜なもの」は多くの場合、受け入れることができません。
結構受け入れることができない理由を丁寧に話しているつもりなのですが、どうにも「俺が考え出した新しいやり方を受け入れられないなんて!」みたいな怒りの感情を出してきます。

そういう人は大体、2つの理由で残念なんですね。

  1. 「自分の考え」ってのを主語にしているので独りよがりな考え方
  2. 「自分の考え」をろくすっぽ考えずに「新しい」って言っちゃう意識の低さ

その辺を懇切丁寧に説明しているのですが、こういうのは説明すればするほど意固地になる傾向があるので、なんというか何度か提案を受けるうちに即答で却下している感じになってしまうことが多いです。
お互い時間の無駄なのでもったいないなぁと思っています。

とりあえず、まずはこの「残念な2つの理由」を掘り下げてみましょう。

1.自分流と独りよがりを勘違いしていませんか

そもそも、「自分らしさ」とか「自分のやり方」にこだわっている人って、あからさまに「浅い」ことが多いです。
自分のやり方で相手を動かすことができない場合、それは「自分流」ではなく「独りよがり」じゃないですか。
その指摘を無視してでも似非自分流を貫く、と言うのは、行動の内容や意見の内容よりも「我を通し続けること」に意義を見出すナルシストにしか見えないんですね。

周囲に迎合することそれ自体が良いとは言いませんが、「分の行動で周囲を動かすのであれば、周囲の心をつかむためにどうすれば良いかを考えなければならないわけです。
それができないから独りよがりなんですよ。

2.それは、本当に新しいんですか

それに、「個人が考える意見」や「個人で行えるチャレンジ」の大半は、既に先人が考えたことがあるはずで、にも関わらず何らかの理由で実現できなかったことです。
だから、その「今まで実現できていない理由」をちゃんと見つめて、自分なりに解決する方法を考えなければ、それは成功しません

でも、運が悪いことに、そういう人は「自分の考えはなんて素晴らしく、新しいんだ!」って思って舞い上がっちゃってるから周囲の意見を聞く余裕がないんですよね。
単純に、面倒くさいんですよね、そういう人。
「自分も昔はそういう時代があったなぁ」って思うことはあれど、かといってそれを許容できるわけでもなく、みたいな。

そもそも、新しいから蹴られるなんて幻想であって、魅力が無いから蹴られているだけなんですから、もっと魅力的なものを考えれば良いでしょう。

何故貴方の意見は通らないか

で、ここからが本論です。
貴方のの意見が通らないのは、のですが、当の本人が「その発見に勝手に感動している」せいで肝心の部分がごっそり抜けているからに過ぎず、それ以上でもそれ以下でもないです。
まずはそれを頭にたたきつけてください。

大体、失敗する提案は、以下の3パターンに分類されます。

  1. 問題が問題じゃない
  2. 試行錯誤が足りない
  3. 問題の再生産をしているに過ぎない

ここを意識して、適当な例えと一緒に書いてみましょう。

1.問題が問題じゃない

「何か提案してみる」ことを目的にしてしまうと、こういう感じになっちゃう人がかなり多いです。

LEEの20倍カレー片手に「この食べ物はあまりに辛いので、辛くないものにしましょう」と言われたら、「やらなくて良いよ」って言いますよね、みんな。
20倍、と銘打っている以上、辛いのが正解なのであって、辛くないものにしたらそれは商品として成立しなくなってしまうので。
つまり、「ここが問題点なので修正しましょう」って提案しても、その問題点が、ターゲットにとって問題ではない場合があるんですよ。

上記の例とは逆に、明らかに子供向けと思われるカレーを片手に「この食べ物が尋常じゃなく辛いので、辛くないものにしましょう」と提案すれば、ほとんどの場合、OKを出しますよね。
「言われて見ればそうだな、なんで誰も今まで指摘しなかったんだよ。この部署の子供の味覚全員おかしいんじゃね?」って驚くでしょう。

「想定しているターゲット」を無視して、「自分の好み」で話してしまうと、結果としてその提案は意味が無くなってしまうのです。
だから、提案する時には、絶対に、「誰に伝えたいか」を考えないとダメです。
そしてその「誰か」は可能な限り具体的に、言葉にできるターゲットにした方が良いです。

2.試行錯誤が足りない

1,のような部分についてツッコミを入れているていると、そのうち、問題点をちゃんと捉えてくれる人が現れてきます。
でも、まだ、ちょっとズレてる提案をしてくる人が結構いるんですね。

「このカレーは激辛が売りなので練りワサビをつけましょう!!」みたいな。
いやいや、「カレーに求めている辛さ」は「ワサビの辛さ」じゃないでしょ。
別に提案した人がワサビ入りカレーを食べたことあって、それを美味しいと感じたのなら良いですよ。
でも、多分、その提案した人は食べたことないよね。

こういう人は、「自分の中の試行錯誤」が足りないんです。
このレベルの提案は、「試行錯誤に飽きたから」あるいは「試行錯誤をする気が無いから」とりあえず提案しているだけなんですよね。
だから1秒もかからず反論されてしまうし、提案した人は反論に対して有効な反論を準備して来てない。

新しい提案をする時に必要なのは、「自分の中で試行錯誤する」ことなんですよね。
これはいわゆる「アイデア出しの方法」とは対極の方法なのですが、「提案」って言うのは「アイデア」じゃないので、その一本で戦う必要がありますよね。
イデアだけで渡り歩きたいんだったら、1個じゃなくて30個くらい準備してから来なきゃダメでしょう。

ちなみに、ワサビ入りカレーが美味しかったとして、それは「辛さを求めている人たちへの新提案」ではなく「カレーという枠組みを超えた新提案」の方が妥当なので、「もっと辛いカレーを食べたい人」に食べさせたいものではありません。
この部分は、「プレゼン能力が下手ですね」って部分なので、ちょっと今回の話とはズレるので省略しますね。

3.問題の再生産をしているに過ぎない

試行錯誤しすぎるてネタが腐ってしまったような系列ですね。
この部分まで考えているのであれば、あと一歩なんだけどなぁ、と思います。

レトルトカレーはパウチを開けるときにはねて服が汚れたりするので、紙エプロンをつけましょう!」みたいな感じでしょうか。
コスト的にも妥当そう! みたいな。

ただ、「服が汚れるのがイヤ」な利用者は、既にハサミとか包丁を用いて切るという問題解決方法を取っていることが多いです。
と言うことは、この提案は、「ハサミを探して使う手間」を「紙エプロンをつける手間」に切り替えただけで、「面倒さ」が無くなったわけではないんですよね。

もちろん、抜本的な改善としては「カレーがはねない構造を考え出す」ことが大前提でしょうが、世の中そんな発見は簡単にできるものではありません。
ですから、「ほかのアプローチで解決しようとする」というのはとてもすばらしいことだと思います。
ここまで考えて提案してくれる人は、問題点を的確に捉えて、なおかつ、改善方法の実現可能性まで言及して考えているわけですから、とてもすごいなぁ、と思います。
もう一歩が足りないだけで、ほぼ正解じゃないかなぁ、とか。

提案する「だけ」では何も改善しない

残念ながら、今回書いた問題点のの一つ目、「問題点が問題じゃない」提案を何度もしてくる人がかなりの数います。
そういう人の提案は、多くの場合、時間の無駄にしかなりません。
何故か。「何故それが問題じゃないのか」を考えていないからなんですよ。
たまたま食べたカレーが辛かった、と言うだけで「こういうカレーは生クリームなどを添えて辛さを紛らわせるようにするべき」って言ってるに過ぎないんです。

そんな提案はまったく意味が無いし、その提案では何の改善もしません。
「新たに生クリーム入りカレーを作ろう」と言う提案ならば理解できますが、「このカレーに生クリームをぶちこもう」と言うのは議題としておかしいんです。
そしてそういう発言を繰り返している人は、単純に一緒に仕事をしていてわずらわしいので、どこか遠くで適当に吼えていただく以外の仕事を任せられなくなります。

この違いをちゃんと理解して、その違いに目を向けることができる人ならば、次の提案はきっと受け入れやすい提案になりますし、最終的に組織のコアを任されるほど、周囲に好かれる人になるはずです。
というのも、ちゃんと考えて提案を続けている人は、他人の提案についても考えることができる人が多いですから、人が集まりやすいんですね。

ということで。
貴方の提案が通るためにはこんなに多くのハードルがありますが、今後とも、上記を考えながら、是非とも、「提案」してください。
あ、上記を考えてない提案だったら無視するよ!