気をつける人

その指摘、伝わって無かったよね

仕事をしていて、私は指導する立場になることが何度かあります。

その中にも特に悩ましいことの一つがこれ。

「○○が間違ってますよ」って指摘すると、「今後、気をつけます!」と、とても元気よく答えてくれる人がいます。
元気が良いなぁ、と思うのですが、こうやって「気をつけます!」しか言わない人って、結構な頻度で、同じ間違いをしてくるんですよね。
統計は取ってませんが、この話を周囲にすると「あぁ、そうそう」って同意が多いので、傾向としてはそういう感じでしょうか。

短気な私は同じ過ちを四回くらいした時点で「全然気をつけてないじゃん!」ってキレてしまうのです。
しかし、それでもなかなか改善しない。
何故伝わらないのだろう、とか、何が伝わっていないのだろう、とか、色々考えたりヒアリングしたりしていたのですが。
ヒアリングしてもなかなか見えてこないんですよね。

で、最近、なんとなくですけど、わかってきました。
「何を気をつけるか」が分かってないから、あるいはその視点が合ってないから、「気をつけてないじゃん」ってツッコミも空回るし、そもそも伝わって無いのではないか、と。
だからヒアリングしてても互いの言葉が空回ってるのかと。

確かに焼肉とクレープは別の食べ物ですよね

真夜中に焼肉やりたいけどホットプレートが無い、って話になったとしましょう。
そんな時に、三島さんが「俺にまかせとけ!」って言って走って外に出てったわけです。

こんな真夜中にホットプレートとかどうやて仕入れるんだろう、なんて話してるうちに、三島さんがなんかずるずる引きずってくるの。
満面の笑みで、三島さんは「マンホールの蓋とガスバーナー持ってきたぜ!」と。

もちろん、「わーい、使おうぜー」なんて盛り上がるわけもなく。
「返してこいよ!怒られるよ!誰か落ちたらどうするんだよ!アホか!危ないわ!っていうか汚いよ!」ってなりますよね。
当然の帰結というヤツです。

で、三島さんはちょっと不満げな表情で、でも確かにマンホールの蓋じゃダメだよねー、と納得してくれたのか、「分かった、今後は気をつけるわー」って言ってマンホールの蓋をずるずると返しに行きました。
ちなみにその日は仕方ないのですき家に行って肉だけ食べて帰ってきました。

後日。
また真夜中にクレープ作りたくなったけど、案の定ホットプレートが無い、って話になりました。
再び三島さんが立ち上がり、「俺に任せとけ!」と高らかに宣言。

今度は何持ってくるんだろうね、とかっていうか三島以外が行くべきだったんじゃね?とか話をしているうちに、三島さんがガラガラと引きずってきたんです。
三島さんは今回はものすごいドヤ顔で「マンホールの蓋、ガスバーナー、そして! 消毒用アルコールを持ってきたぜ!」と。

当たり前ですが、「わーい、消毒して使おうぜー、あ、でも表面は網っぽいか裏使おうぜ裏!」って盛り上がるわけもなく。
「返してこいよ!昨日も言ったよ!天丼にしてももう少し安全なボケにしてよ!」ってなりますよね。
自明の理というヤツです。

焼肉もクレープも、ホットプレートが必要ですよね

ポイントは、三島さんは、「汚いよ!」っていう部分には対応をしてきているのです。
更に、「危ない」というキーワードから、もしかしたら前回とは違う、人気の少ない所のマンホールの蓋を持ってきたかもしれません。
更に更に、「【焼肉】する時にマンホールのふたは持ってこないように」は理解しているでしょう。

でも、それって、根本的にズレてるんですよね。

そもそもマンホールの蓋をホットプレートの代替品にすること自体が意味不明です。
というか、危険ですし、不衛生です。

と言うことで、この話を本当に気をつけてもらうためには、「マンホールのふたを動かしたら危ないよ!」って話を中心に、相手に状況を想像してもらう必要があるのですよ。

こういうのは、行為に対しての影響が何かをしっかりと想像してもらって、丁寧に話をしていくしか方法は無いし、その想像を働かせる範囲はどんどん広げていくように話をしないといけないなぁ、と最近気づきました。

最大の問題:ホットプレートの代替品は何か

でも、この「想像を働かせる」部分がうまく伝わらない人と何度かお仕事をしたことがあります。
と言うか、最初の「気をつけます!」って人の大半は、この部分が、丁寧にじっくり時間をかけてもうまく伝わらないんですよね。
「ああ、どうやって教えれば良いのかなぁ」といまだに悩んでいます。

そして今日も、ウチの後輩は笑顔でマンホールのフタを持ってくるのです。
「今日は焼きそば作るんですよね!」
危ないから返してきてください。
え? 今回は危なくない?
マンホールのふたを動かしたら危ないって深沢から教わったから、製鉄所でマンホールのふたを作ってもらった?
そっかー……そう来たかー……

未だに、答えが出ない悩みだったりします。