(後輩に)伝えたい、この思い 【第一部: まずは「普通」をこなすということ】

サラリーマンの一生は長い

サラリーマンの人生はむちゃくちゃ長いです。
塾とか、そういう「学外のコミュニティ」を探さない限り、学校と言うコミュニティは最大で小学校の6年間しか継続しません。
小学校から大学まで一貫教育だとしても、そのコミュニティは16年ですね。

それに比べて、サラリーマンは、退職や転職などの変化が起きない限りは、40年近く、コミュニティが継続することになります。
いや、もう、気が遠くなるほど長いわけですよ。

学校生活はどんなにつまらなくても、デビューに失敗しても、数年我慢すれば自動的に抜け出すことができます。
ところが、会社生活は、つまらなかったり、デビューに失敗したりしても、「自らの力で脱出しない限りは」抜け出すことができません。

もう一度言いますが、サラリーマンの一生は、長いのですよ。40年もあるので。
IT業界はまだ流動性が高い方ですが、それでも、転職をするのは容易ではありません。
そもそも多くの人は、会社に不満を持っていても転職するだけの行動力を持っておらず、ただただ会社に対して不満を言うだけの人ばかりでしょう。
ですから、デビューに失敗すると、それからの40年が、つまらなくなってしまうのです。

で、デビューに失敗する大きな要因は「一歩目を読み違う」ことが一番多い気がします。

それは【会社が最初に新人からもらうのは「スキル」ではなく「時間」だという事実】の読み間違いですね。

最初は「時間」を会社に捧げることでしかお金をもらえない

まったく残業しなくても、昼休みを含めれば一日のうち9時間くらいは職場に居ますよね。
その9時間が「苦痛」だったらもう会社ってひたすら精神的負荷をかけるシステムになってしまいます。
もちろん、会社としてもそんなシステムにすると生産性が大幅に落ちますし、離職率も高くなりますから、できる限り会社の空間を苦痛じゃないものにしようと努力はしています。

ところが「お金」が絡む以上、どうしても厳格に決めなければならないルールが多く、会社としては「就業中野球しても良いよ」とは言えないわけですね。
もちろん、机にへばりついて残業しまくることを奨励する気も毛頭ないのですが、少なくとも会社としては最初は「拘束時間」に対してしかお金を払えないんですよね。
仕方ないので、就業中の野球は禁止せざるを得ません。少なくとも若手に対しては。(拘束時間に対して対価を支払わないシステムであれば、残業代なんて要らないわけですよ)

まず、会社員に求める最初のスキルは「一定の時間以内に、一定の結果を出す」ことなんですね。
「豆が同じなのに日によって味や濃さ変わるコーヒーが出る喫茶店」とか「注文してから持ってくるまで1時間かかる喫茶店」とか、誰も客は行かないじゃないですか。
少なくとも、「日によって味を変えるコーヒー店」とか「超こだわり、1時間かけて抽出したコーヒー」って感じでセールスポイントに昇華させていないなら、行かないですよね。
そういうお店も、好きな人しかいかないですし。

ところが、会社に入ってすぐの新人は、当たり前ながらその部分に目が向かないわけですよ。
うちの会社は、「超こだわりのコーヒー」を出すお店ではないですし、それを同意していただいて会社に入っているわけです。
にも関わらず、「超こだわりのコーヒー」を出そうとしたり、「インスタントで良くないっすか?」みたいな話をしちゃう人が多いです。
ちょっとズレてるんですよね。
もちろん、その次のステップは人によって違いますよ。
例えば「同じ時間をかけてより美味しいコーヒーを目指す」のか「同じ味のコーヒーをさらに短時間で出す」なのか「同じ味のコーヒーをさらに安価で出す」とか。
更にはコーヒー以外に目を向ける人もいるでしょうし。

でも、ウチはまぁ、そういうお店なので、まずは「とりあえずその辺の喫茶店に出てそうなコーヒー」を出せるようになってほしい、っていう要求からスタートしています。
天性のバリスタだったら、新人のうちにそのくらい簡単にできるようになるかもしれませんが、そうでなければ、まぁ、「じゃあ、勤務時間中にマスターしてよ」って話になるよね。
「来年までにマスターしてくれたらペイできるから」っていう非常にドライな話からスタートしなきゃいけない。

この一歩目を読み間違えている人が多いなぁ、って思います。
結構言葉で伝えているつもりなんですけどね、このへん。

別に残業しなくても良いけど、勤務時間中はちゃんとスキルを会得してね

ということでスキルを会得するのが良いのですけれど、上に書いてある通り、新人が最初に会社に捧げるものは「時間」です。
そして、その時間に見合った金額を会社は支給します。

なので、残業されるとそれはそれで困りますし、別にサービス残業までして会社に奉仕する必要はありません。
前者、ただの残業であれば「そもそも新人の時間なんてそんなに過剰にもらっても処理に困る」わけです。
かといってサービス残業をするっていうのは「会社と従業員の契約違反」でしかありません。

なので当たり前ながら残業はしなくても良いのですけれど。
その分、勤務時間はちゃんと会社に捧げてくださいね。
「時間」を会社に献上するだけでお金がもらえるのはせいぜい一年〜二年程度ですから、その間で一定のスキルを手にしなければなりません。
三年目以降は、会社に提供するのは「知識」であり「技術」であり「スキル」です。つまり、「時間」だけで評価されるんはせいぜい二年なんですね。
その時になって「想定しているスキルに達していない」場合はもらえるお金はほとんど上がらなくなりますし、それこそIT業界であれば「残業」を強いられることになってしまいます。

そうなる前に、ちゃんとスキルを身につけて置かないと、会社で居場所がなくなっちゃうよ。私みたいに。