コンサルタントは嫌われることが仕事

コンサルタントの話

PGをしていると、「あんなSEにはなるまい」とか軽蔑しているようなSEが結構ちらほらいます。
ところが、いざSEになると、ちょっとでも気を抜くと、その軽蔑していたSEになってしまう時があって、自己嫌悪に陥るわけです。

同様に、SEをしていると「こんな無様なPMにはなるまい」とか「こんな雑な要件しか決められないコンサルタントにはなりたくない」とか思うわけです。
ところが、いざコンサルタントになると、やっぱり、その無様なコンサルやらPMになっちゃうみたいです。
私はPM側は経験ありますが、コンサルタント側は経験皆無なので、そっちについては本当は語る言葉はないんですけど。
コンサルタントはPMと違って、ハタから見ていて「あ、ダメだ」って思うのは一言で言える気がしたので、今日はそんな話をしようかなぁ、とか思います。

コンサルティングという仕事

PGから順に成り上がっていくようなコンサルタントだと特にそういう思いを抱くのは分かりますし、「もっと良い答えがあるはずだ!」とも私は思うのですが。
私のこれまでの経験則だけで、コンサルティングっていう仕事のゴールは何か、って定義を決めるならば、「企業の成長のための人柱」かなぁ、とか思います。
人柱ってのがミソですね。

言い方を換えると、「会社が怖くてできないようなことを後押しする」のがコンサルタントの仕事の中で結構重要なポイントなんですね。

ITでコンサルに業務効率化をお願いする場合なんかを例にしましょう。
これまで伝票登録に10分かかっていたものが5分で終わるようになったとしますね。
となると、伝票登録を行っていた経理担当者の人数を半分に減らすことができるわけです。
ここまでは開発していても分かる視点なので当たり前すぎてあくびが出るんですけど。
コンサルタントはそこから更に一歩進んで、営業担当者自身がリアルタイムで伝票登録できるようにして経理部門から伝票登録担当者を全員左遷させるだとか、そもそも伝票登録自体が不要となるように業務フローを変更するくらいは提案するわけですよ。
つまり、伝票登録を行っていた経理担当者の人数をゼロにするという大改変ができるのね。

となると、そりゃあ経理担当者から死ぬほど恨まれるわけです。リストラされるかもしれないわけですし。
そんな時に残った人たちが、「このクソ会社が!」と思わないようにする、っていうのがコンサルタントの大事な仕事の一つに当たる、と言えるんですね。
「あの似非ITコンサル野郎が来たせいで俺の仕事が無くなった!」と思わせることが大切。

だから、人柱なんです。
コンサルタントっていう嫌われ者の存在を礎にして、会社のリストラやらなにやらを成立させるわけです。
「上手いこと会社の敵として立ち回れる」コンサルタントって、やっぱり有能な人が多いですね。

類似の言葉に「海外の本社から来たCEO」とか「カルロス・ゴーン」とかありますけど、大体は同じ意味ですね。

誰だって嫌われるのは苦手

さて、大半の人は「好かれる」ことは得意でも「嫌われる」ことは苦手だと思います。
いや、好かれるのが苦手な人も勿論居ますけれど、それでも、「好かれよう」という意識の方が強いんですよね。
「上手く嫌われよう」なんて、一歩間違うとヒロイックな幻想で中二病の0.25歩手前の考え方ですし。
大体そういう患い方をした人って嫌われ方がすっごい下手で「なんか何言ってるか分かんない、ウザい」って言うただの説明不足なだけだったりするんですよ。

ところが、ここで、上手く嫌われないと、コンサルティングができないんですよね。

中二病患った感じの「俺が敵になれば良いんだっていうナウシカも真っ青の自己犠牲オーラ満載コンサルタント」とか単純に気持ち悪いので、孤立して(っていうか扱いに困るから放置されて)結果的に的確な情報収集ができなくなっちゃってるのも何度か見たことありますし。
「ひたすら正論をぶちあげまくった挙句根回しを一切していない」ようなコンサルタントとかだと当人を雇った会社ごと嫌われてしまって現場と経営で変な派閥ができて会社の雰囲気がどよーんとする感じになったりします。
かと言って変に好かれてしまうと、最後の最後でコンサルタントの人は優しくて良い人だったけど会社最悪だな!」なんて思われちゃうし。
特に日本の企業って若干ウェットな関係が多いので、「社長や幹部のカリスマ」みたいなものでどうにかこうにかつないでいる場合も結構あるんですよね。
それが嫌われるって言うのは会社としてはマイナスになるわけで、そこのモチベーションを維持したまま効率化しないとパフォーマンスが落ちるだけじゃないですか。

だから、コンサルタントは人柱として、立ち去るときには石を投げつけられる勢いで、最後は嫌われる覚悟が必要なんですよね。

コンサルタントにはあんまりなりたくない

まぁ、こんな感じなので、「コンサルタントは口だけで適当な事を言って最終的に俺らに損させてるだけじゃん」って言う批判って言うのは、かなりの確度で正しい、と私は思っています。
むしろ、「でもコンサルタントってすごいよね」みたいなことを思われちゃったらそれただの「自称カリスマ美容師」みたいな感じの違和感しか残らないですし。

ただまぁ、「開発側」、つまり「一緒に会社の敵に回ってくれるはずの人」からも嫌われるような立ち回りをする人が多いなぁ、って感じることも多いので、もしかしたら「開発側から嫌われるメリット」ってのがどっかにあるのかなぁ、とか思ってたりします。
特に請負業務だったらコンサルタントが盾にならなくても会社との付き合いは開発が終わったら切れるんだから、あんまりそこでコンサルタントが間に立って壁にならなくても、って思うんですけど。
いや、開発の人たちが果たしてユーザーと戦えるかって言うと微妙なので、その代理の敵としてコンサルタントが藁人形の役割をしているのだとしたらすごい精神力だとは思うんですけど。

いずれにせよ、このままのやり方を続けいても、「そんなもん仕事にしたくないわ」って言う至極当然な感情が出てくることのほうが多いです。
単価は今の1.5倍〜2倍くらいもらえるんでしょうけれど、それこそ桁が違うんでしょうけれど、「お金をもらって嫌われる」って、ものすごい心が荒みそうです。


ということで、同期の人がコンサルタントを取った記念の、負け犬の遠吠えでした。

私は当面はSEかPMで回していきます!
あ、スケジュール? なおすなおすー! なおすよー! 予算内で直すよー!